私のプロフィール

井上秋子 Akiko Inoue

「 2008年、アメリカ駐在に帯同し、カリフォルニア州サンディエゴで子育てのかたわら水彩画を学ぶ。
2013年に帰国後は熱海市泉に拠点を置き、神奈川県を中心にスケッチに出かけ風景画を制作。
2015年より「湯河原・真鶴アート散歩」の企画で自宅や他会場にて個展開催、毎年、湯河原、小田原、横浜でのグループ展に参加。湯河原美術協会会員。
2019年、熱海・湯河原活動する絵画クラブ「アートサロン」の開設に副代表として携わる。
同じく2019年、横浜の戸塚にてビギナー向け水彩画教室開講。
2020年戸塚第2教室開講。11月湯河原美術館併設カフェにて個展。
2021年春より熱海にてビギナー向け水彩画教室開講。

2児の母。堪能な英語とフランス語を活かして欧州にスケッチ旅行に行くのが夢。
趣味はお菓子作りと菜園、お城巡り。ペットはうさぎ。

インスタグラム Instagram

作品のアカウントと教室や展覧会情報のアカウントの2つがあります。

@akiko_inoue_watercolor
2018年に開設し作品だけを載せているアカウント。海外フォロワーが約4割を占める。

@atelier_orange_watercolor
2019年に開設。制作現場、教室風景、展覧会情報などを紹介している。

風景を描く 写真ではない手書きの良さ

江ノ電のある風景を描くため取材した鎌倉高校前駅

省略や再構成は効果的に

風景画を描くことは、現実そのままに描くことではない。現実通りなら写真で十分。最近は写真をパソコンやスマホで自由に加工もできるから、素人でもちょっとコツを飲み込めば「インスタ映え」する写真を作ることは可能だ。
こんなにテクノロジーが発達しているのに、それでもアナログな手法で絵を描く。しかも描き手の想像力・創造力から生れ出たファンタジーや抽象画やイラストではなく、愚直に絵具と筆で風景画を描く。うーん、何でだろう?(笑)

そんな根本的な問題はさておき、風景写真との違いは、絵は自由に切ったり張ったりできること。色も自由に変更できるし、筆致や絵具の濃さなどでさまざまな表現が楽しめる。
私も木々が邪魔で描きたいものが見えないときは少し位置をずらしたり、変に空間があいてしまう時は何かしら描き加えたりする。もちろん下手にやると作為的になってしまうので、不自然にならないよう考える。

何気なく歩いている時に綺麗だなと感じた光景を撮影しておく

メイン(主題)を決める

「絵も定食と同じでメインがあって、副菜や汁物のようなサブメニューは手を入れすぎない」とは高校時代の恩師の教え。
一番描きたいものにはしっかりと手を入れ、周りはぼかしたり薄くしたり、見る人に何を描きたいのか伝わるように表現方法を変える。ファインダーを覗いてどこにピントを合わせるかを決める写真も同じだと思う。

色も自由に変更して構わない。例えば金閣寺を派手なピンクに塗ったら宗教施設なだけにちょっと不謹慎な気さえするが、そもそも金色を再現するために黄色系絵具を駆使するだろう。影の部分を青や紫がかったグレーで表現する人も多いはず。川の流れを表現するのに、本来透明なはずの水に水色を使う。そう考えると絵を描くときは誰でも自然に色を変更して描いていることになる。
色を自由に選ぶのであれば、全体としてまとまりのある系統の色を使うのがいいだろう。時には反対色を並べて目立つようにすることもあるし、同系色でまとめることもあるだろう。
何しろ、絵は自由なのだから。アートイズフリー!

有名スポットを描くのも勇気がいる…?

私は油絵をやっていた高校生の頃から風景画を描くのが好きだ。
人物や静物、イマジネーションを働かせたイラストなど、水彩画にもいろいろあるけれど、なぜか風景画が一番好きだ。
中でも建物を描くことから私の水彩風景画は始まった。教会や寺院など有名な観光スポットを描くことも多い。観光も兼ねて、スケッチや取材に行くのも楽しい。だが、観光スポットで記念撮影をする時のような風景を絵にするのは少々難しい。人が多すぎることや、ありきたりな構図なら写真で十分だからだ。

みなとみらいのビル群をいかに魅力的に描くか?

風景画の場合は、展覧会で絵を見た人がすぐにどこか分かる、よく知られた場所であることがお客様を惹きつける理由の一つであったりする。もちろん絵として美しいことは言うまでもないが。ただ有名な建物の場合、ちょっとした歪みや色など現物との違いまで見抜かれやすい。寺社や城は経験上、細部まで正確に描くのは非常に根気がいるので、どーんと画面の中央に描くのはビギナーにはハードルが高い気がする。その場合は建物全体を描かずに、近くに生えている木々とともに一部分を切り取った絵にするのもひとつの手だろう。

日本丸の総帆展帆を狙ったが、あいにくの曇り空。
でもそこは絵なので、なんとでもなる!

構図が大事

風景画でまず大切なのは構図だと思う。
風景の切り取り方は描き手によって様々だ。私は油絵をやっていた頃の構図の切り取り方(当時はもっとごみごみした部分を描いていたのだが)を自分のスタイルとして残している。

近年は建築物そのものよりも、普段の生活で目にする(有名な場所ではない)普通の街角を絵にしたいと思うようになった。生活感のある町並みや商店街、田舎ののどかな光景など、絵になる風景はどこにでもある。写真映えしない(もちろん撮影する人によっては素敵な写真になるのかもしれないが)景色であっても、絵にする時にどれだけ芸術的に雰囲気を醸し出せるか、そこに画家の腕がかかっているのかもしれない。
そのような、ある意味チャレンジで初めて描いた街角の絵は、ごみごみした商店街の雨の夕暮れ時で、とても苦労したのを覚えている。出来が良いのか悪いのか分からないまま展示したところ、なぜか見る人にノスタルジーを感じさせたようで、買ってくれる人まで現れた。
見る人の琴線に触れるかどうか。それは難しい課題だけれど、とにかく自分のスタイルで風景を描く。これからも挑戦が続く。

水彩スケッチ 現場か写真か

東京駅は魅力的なモチーフだが、人が多い上に時間がかかりそうなので現場で描くことは諦めた

屋外で描く・写真を見ながら家で描く

私は風景画を描くのが好きなので、月に数回スケッチに出かける。
やはり絵にする時に現場の空気感や思い入れが自然とにじみ出るものなので、屋外スケッチまたは取材は大切である。
ただ、家族や友人との観光の途中や単なる移動の際に惹きつけられた風景――夕焼けが綺麗だとか雨に輝く路面だとかは、なかなかスケッチをする余裕がないのも事実。
その場合は、できるだけその場の空気感を心に留めながらスマホで撮影して、家でゆっくり絵にすることになる。

屋外スケッチにしても、F4サイズの絵を仕上げるのにおおよそ4~6時間かかる。描いているうちに雲の形は刻々と変化するし太陽が動き影の位置が変わる。その日の湿度によって絵の具の乾き方も違い、着色のスピードや絵具の混色にも関わる。そこが屋外スケッチの難しいところ。
屋外で制作していても、例えば影の落ち方が一番魅力的なタイミングにスマホで撮影しておいて、絵の中で影をつける際には参考にする。当然走り去る車や電車は写真を見ながら描き入れることになる。どのみち写真と絵は切っても切り離せない。

電車は一瞬にして走り去ってしまうので、連写しておき、後で良い角度を選ぶ

現場でスケッチ、仕上げは家でゆっくりと

その上、私は現地で描くとどうしても実際の色に引きずられる傾向があるので、家で落ち着いて描くほうが好きである。どこにいても自分の色を出すには、まだまだ未熟ということかもしれない。
というわけで、屋外スケッチに出かけても、途中で切り上げて家で仕上げるほうが多い。ひどいときは下書きしかしないで帰って来る時もある。

家で描くときは、ゆっくり構成を考える余裕が生まれる。画面の構図や色のおおまかな配置や着色の順番を落ち着いて考える。水彩画は油絵のようには重ね塗りがきかないので、下書きをしてから色を置くまで、しばし工程を考える時間を持っている。どこにマスキングをするか、どの時点で塩を使うか、下地にどんな色を使うかなどを決めるのである。
もちろん考えていた通りには進まないし、色を置く際に偶然にできるにじみや染みも水彩画の味わいだと思う。

上の写真と比べて、電車の位置などが違うのがお分かりだろう。
スケッチに行ったときは、まだ一分咲きだった梅も絵の中では咲いている。

写真よりも魅力的な画面を作る

写真の通りに描くのであれば、初めから写真で良い。
そもそも写真という手段があるのに、なぜ絵を描くのか、絵にする必要があるのかということを考えると、水彩画の持つ「にじみ・ぼかし」をうまく利用して、ときには大胆にモチーフを省略・再構成することで、「写真より魅力的な画面を作る」ということだろうか。

絵なのだから、すべてをその通り描く必要はない。
実物通りの色にする必要もない。
絵は自由なのだ。アートイズフリー!

2022年4・5月 熱海にて個展開催

コロナ禍でなかなか思うように活動できない時期が続きましたが、大好きな熱海の街での個展開催を夢見て、地元の風景を描きためてきました。この春、ようやく熱海の老舗和菓子店・間瀬 咲見町店にて個展開催できる運びとなりました。

風 光る 熱海 ~井上秋子水彩風景画展~

2022年4月27日(水)~5月24日(火) 終了しました

菓子舗 間瀬 咲見町店
熱海市咲見町4-29   10:00~17:00(L.O.16:30)  木曜定休

個展会場では風景画の絵ハガキも販売し、売上の一部を土石流災害で今も復興の最中にある伊豆山地区の義援金として寄付させていただく予定です。

熱海駅から徒歩10分。市役所に向かう緩やかな坂道を下っていく途中に「間瀬 咲見町店」はあります。「伊豆乃踊子」を始めとする熱海を代表する和菓子をお土産に買うのはもちろんのこと、観光や買い物のちょっとした休憩に立ち寄れるカフェが併設しているのが魅力。クリームあんみつや特製くずきりなど、坂の多い熱海の街を散策した疲れを吹き飛ばす上質な和スイーツを味わいながら、ゆったりとした時間をお過ごしください。

駐車場は少し坂を下って右に曲がったところにA.Iパーキングがあります。
菓子舗 間瀬のホームページはこちら

個展開催期間中には、熱海市街地にて水彩画のワークショップも開催予定です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。熱海にて1日体験講座開催(5月16日)

2022年1月 湯河原にて二人展開催

「二人展 ~Well-Being~」は無事終了いたしました。ご覧くださり誠にありがとうございました。
この展示にて販売しておりました絵葉書の売り上げは、田中氏が前回の個展で売り上げたものと合わせて、湯河原町社会福祉協議会に寄付させていただきました。重ねて御礼申し上げます。


緊急事態宣言などで毎年参加していたグループ展が軒並み中止となった2021年。それでも作品発表の場を夢見て、大好きな地元の風景を中心に描きためていた作品を、ようやくお披露目できる運びとなりました。

今回の展覧会は、共に地元の絵画クラブ「アートサロン」を運営している田中通晴氏との「二人展 ~Well-Being~」です。40歳以上も年の離れた人生の大先輩、そして69歳で絵を始めたとは思えない魅力的な絵を描く田中氏との「二人展」開催――胸を借りるつもりです。

会場となるカフェ「and garden」はテラスに足湯もあり、庭園を眺めながら「豆腐屋十二庵」さんプロデュースのカフェメニューを味わえる素敵な空間です。作品をしっかり鑑賞するならランチタイムを避けることをおすすめします(笑)が、豆乳ソフトクリームなども絶品です。是非お運びください。

二人展 ~Well-Being~

開催期間:2022年1月2日(日)~1月30日(日) 水曜定休

場所:MUSEUM CAFÉ and garden   10:00~16:30(L.O.16:00) 

   ※チラシ内容からカフェの夜営業時間が変更になりました※
    1月15・16日 は19時まで、22・23日は17時までの営業です
    夜営業・焚き火・スペシャルメニューあり

   町立湯河原美術館内 1階 
   ※美術館は15・16日のみ20時までナイトミュージアム開催

   〒259-0314 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上623-1 0465-63-8686

緊急事態宣言等により、展示の中止や延期、営業時間が変更される場合がございます。最新の開催状況は、湯河原温泉公式観光サイトをご確認の上、ご来場をお願いします。 https://www.yugawara.or.jp

湯河原焚き火のイベントについてはコチラ

2020年11月にも作品を飾らせてもらった素敵なカフェ。
豆乳スープがお気に入りで度々ランチに来ています。

油絵との出会い

ペインティングナイフで描くのが好きだった高校時代

高校の美術部時代

子供の頃から絵を描くのが好きだった私は高校で美術部に入った。

ただ動機は不純で、純粋にもっと絵を習いたいという気持ちからではなく、中学時代の運動部のキツさに嫌気がさして、「美術部=帰宅部」という「放課後はときどき美術室で絵を描こう」くらいの軽い気持ちであった。

しかしながら、私のその考えは間違っていた!

私の高校の美術部は、大阪の数多い高校の中でもトップクラスに入るレベルの高い、活発な美術部だったのである。活動日はほぼ毎日。夏休みには合宿まであり、お盆休みもなく絵を描き続けるというスパルタ美術部であった。

とはいえ、個性溢れる楽しい仲間たちと絵を描く日々は充実していた。

汚れが落ちにくい油絵具

50号との格闘

初めてなのにいきなり50号の油絵を描いた。この美術部では50号が基本で、時には80号、最大で120号の絵を脚立に乗って描いたこともある。合宿の時だけ「持ち運びが楽」という30号。それでも大きい。今、F4やF6を描いていることを思うと、本当に大きな作品と格闘していたことが分かる。

時間はあるがお金のない私たちは自分たちでベニヤ板を切り、木枠をつけ、下地を塗って絵を描いていた。高価な油絵具も大きな絵だとどんどん使うので、メディウムを混ぜることで量を増やして使っていた。

朝焼けの尾道港。こんな美しい光景を描かず、ごみごみした工場などを描いた記憶がある。

合宿は他の高校と合同で1年時には三重県・波切、2年時には広島県・尾道へ行った。昼間はずっと絵を描き、夜は絵を並べて批評会。厳しい意見が飛び交う刺激的で恐ろしい時間だった。

夏休みの終わりに大阪の高校展(コンクール)があるためお盆休みも学校へ行き絵を描いた。お盆に活動があるのは野球部と美術部だけだった。

文化祭では飾りつけなども任され、なかなか休みのないハードな部活だったが、顧問の先生は厳しいわけではなく好きなようにやらせてくれた。写実的な絵ばかり見ていた私に、印象派やキュービズム、具象や抽象という幅広いアートの視野を与えてくれた。

私が高校の頃に描いた油絵が1枚も残っていないのは残念だが、ごみごみした街角を実際の色とは異なる色で描いた具象的な風景画が多かったのを覚えている。

様々な美術展へ足を運び、レベルの高い他校との交流もあり、アートの視野を広げてくれた高校時代の経験。ただ結果としては、自分には美術の才能がないと思い、絵の道に進むことはなかった。美術部の仲間のうちには美術系の大学へ進学した人もいるが、私は歴史を学びたいという思いが強く総合大学へ進み、しばらく絵から離れることになる。

しかしながら、20年後にまた絵を描き始め、今もなお美術の才能がないと思いつつも、筆を握っている不思議な因果である。