水彩初心者は使う絵具が少ない

大人の習い事の利点―洗い流さない絵具

ビギナー向けの水彩画教室をやっていると、もちろん初めて水彩画を描く生徒さんに出会うことになる。正確には「学校以来」数十年ぶりに筆を持つ、という人。パレットは真っ白で、使う色だけをチューブから少し出して色を作りがちだ。なぜなら、学校では「美術の時間が終わったらパレットを綺麗に水で洗いなさい」と教わるから。たくさん絵具を出してしまい、余ったら水で流し捨ててしまう。それがもったいないから少ししか絵具を出さない。
大人の習い事なので、パレットには色を出したままで良い、ということを最初にお話している。水彩絵具は乾いても水をつければまた使えるのが美点。私のパレットは水で洗うことはなく、常に色が出されたままだ。周りの小さなハコにはチューブから出した絵具が並び、色の名前を小さく油性ペンで書いてある。大きなハコは、黄色・茶色・赤色・影色(グレー)・青色・緑色の各系統を混ぜる場所が決められていて、そこにも常に色が入ったままなので、色づくりの際は「前日のものに継ぎ足し継ぎ足し作る秘伝のタレ」みたいと言いながら作る。(時々は濡れたティッシュでふき取ることもあるけれど)

思い切りよくパレットに絵具を用意してほしい

それでも絵具の量が少ない

パレットの使い方を説明しても、初心者は絶対的に作る絵具の量が少ない。例えばF4の画用紙の1/3や1/2のスペースの背景色を塗るのに、どれだけの量の絵具が必要かわからないからだ。私の教室では、「これから大きな面積を塗るので、大きなハコいっぱいに色を用意してください」という指示を出すようにしている。塗っている途中で色が足りなくなり、再度同じ色を同じ配分で作ることは熟練でも難しく、また混色している間にそれまでに塗ったところが乾いてくるので、絶対に同じようには塗れないのだ。なので、余ってもいいから色を作るときは多めにとしつこく言う。
チューブから出した絵具を溶く水の分量も慣れてこないとわからないから、量的にハコいっぱいであっても水が多くて絵具の濃度が低い人もいる。水で濡らした紙に描くときは薄まってしまうので濃度は高めになど説明している。女性より男性のほうが思い切りよく絵具を使う人が多い気がする。(思い切りが良いのは諸刃の剣だけれども。)
必要な絵具の量、濃さが分かるようになるには、やはり経験を積むしかない。

使い始めの綺麗なパレット