時短スケッチを実践―フランス編
20年ぶりのフランス
前回予告していた通り、約2週間フランスのパリへ行ってきました。目的はもちろんスケッチと取材(風景画制作のための撮影)です。どこを切り取っても絵になる街の風景を作品にしたい!という一心で、約20年ぶりのフランスへ降り立ちました。
25年来の友人バレリーの計らいでパリから車で約1時間の田舎町にも2日滞在、大都会パリだけではなく、小麦畑広がる田園風景や小さな村の街角も見ることができました。
現場ではペン入れまで30分の簡単スケッチ
スケッチの道具はいつものようにマルマンのスケッチブックA4サイズとHB鉛筆、最近お気に入りのステッドラーのペン(0.3-2.0ライナー)、小さなパレットと水筆です。
場所によっては、座ってじっくり取り組めるわけではありません。立ったまま30分ほどでささっと描き上げることが多く、鉛筆で下書きを5分、すぐにペン入れをして、現場では色を塗らずに終わることも多かったです。写真を撮っておいて、家で着色することで、1日に3枚程度描いた日もありました。頑張ればもっと描けたでしょうが、もっぱら取材のためあちこち歩き回り、歩数は毎日1万5千歩ほどになりました。
何気ない街角をどう切り取るかが大事
今回はとりわけスケッチブックの余白をしっかり取ることを意識しました。見える風景をスケッチブックいっぱいに描くのではなく、描きたいものだけを切り取ることが課題。いかに魅力的に見えるかを考える、そしてしっかり描きこむところと背景の扱いを変えるということでしょうか。具体的に言うと、メインのものはペンでしっかり描き、残りは鉛筆だけにしておくと着色してもぼんやりして見えます。ペンの線も太さを変えながら抑揚をつけ、陰影はペンと水彩の両方で表現しています。
歴史を感じるフランスの建物
フランスの石造りの家々は100年以上たっているものも多く、縦に長い「フランス窓」や「コロンバージュ」と言われる木組みが入った壁など、私にとっては魅力的な題材に溢れています。大都会パリは全ての建物が6階建てと高さが揃っていて統一感もあり、圧倒されました。一方少し郊外の街に出ると2階建てなど低い住宅が現れ、庭木や塀に囲まれた家々が並びます。
田舎にあるバレリーの家はなんと1850年ごろに建てられたとのことで、昔風のキッチンや暖炉などになぜか懐かしさも感じました。床が傾いているところもありましたが、内装に少しずつ手を入れて長く大事に家を使うのはヨーロッパならではですね。
パリの画材屋さんSennelier
滞在中、パリ高等美術学校の傍にある「Sennelier(セヌリエ)」という画材屋さんに行きました。ルーブル美術館からセーヌ川を渡ってすぐの便利な立地だったため筆を買いに行ったのですが、なんとこちらの画材屋さんも歴史があり、セザンヌやモネも絵具を買いに来ていたのだとか。
余談ですが、今回「Le Procope(ル・プロコップ)」という老舗レストランへ連れて行ってもらったのですが、こちらは1600年代の創業で、ボルテールやルソーも来店したのだとか…! この店のことはフランス人の友人はみんな知っていて、フランスの持つ長い歴史に圧倒されました。