歴史好きが描いたスケッチ画で巡るモンフォール・ラモーリ

モンフォール・ラモーリ Monfort l’Amaury

フランスにスケッチ旅行に行った際、同行者と観光だけで終わった場所ももちろんある。描きたい風景がたくさんあったので、ひたすら写真を撮り、帰国してから作品に昇華しつつある。
パリから車で西へ約1時間のモンフォール・ラモーリ(Monfort l’Amaury)もその一つ。中世の教会や城跡が残る小さな町で、友人たちと5人で訪れたため、スケッチブックを開くこともなくカメラでの取材に徹した。

1番惹かれたのはこちらの石造りの門跡。崩れ具合も時の経過を感じさせて風情がある。

Port Bardoul

小さな個人商店が並ぶ石畳の小路も良い。

石畳の通り

写真を見ながら次々とペン画を描いているうちに、歴史好きの私はやはり城の跡が気になってきた。

アンヌ・ド・ブルターニュの塔

アンヌ・ド・ブルターニュの塔(Tours d’Anne de Bretagne)と呼ばれる、いくつかの石造りの建物廃墟が残るだけの城跡。見晴らしの良い小高い丘の上にあり、石の積み上げ方が中世らしさを醸し出すが、雨ざらしで浸食も進むだろうに、石壁の上に子供たちがよじ登って貴重な遺跡を保存しようという雰囲気もない(苦笑)。観光案内所が休みだった上に、これといった立て看板もなく、かつて城だった全体像が分からないまま散策し、記念撮影をして終了という1日だった。

Tours d'Anne de Bretagne

城の名前はおろか、町の名さえ覚えられないまま帰国したのだが、「アンヌ・ド・ブルターニュの塔」という名前から検索していくと、俄然歴史好きの血が騒ぎだした(笑)。

簡単にまとめると、この町ができたのは紀元1000年代、中世のフランスは小さな国々がたくさんあり、領主たちがそれぞれを治めていた。パリの西に位置するこの地は14世紀にブルターニュ公領となる。15世紀末アンヌ・ド・ブルターニュは男子が途絶えたブルターニュ家からフランス王・シャルル8世に嫁ぎ、この地もフランス王国に編入された。アンヌはモンフォール・ラモーリで5年ほどを過ごし、自身の名前を冠した塔を建てた。以上!

中世の城の多くが周りの国から攻め入られないように要塞の形を取っていて、17世紀以降の優美な宮殿とは程遠い。モンフォール・ラモーリの城の復元図をネットで探してみたが見つからなかった。同時に訪れたベンヌ(Beynes)の城跡が時代的にも少し似ているのではと思う。13-15世紀ごろの遺構・ベンヌ城も廃墟だが全体の形がなんとなく残っている。

Chateau de Beynes

昔と今が共存するフランス

フランスにはローマ時代の石造りの建物が残っているなど、長い歴史を感じさせるところが歴史好きにはたまらない。今回訪れたモンフォール・ラモーリも、かつての城があり、教会を中心にした広場には、今も人々が集うカフェがある。日本食のレストランも、銀行のATMもあり、長い長い歴史は今もまだ続いているのである。

大聖堂かと思うような立派な教会。中のステンドグラスも見事。
重みで歪んだのか、中央が少し下がっている。右の店は美容室。

中世後期から各地で作られたコロンバージュと呼ばれる木組みの家。アルザス地方に多いが、パリ近郊の小さな町にも残っている。
観光スポットとしては、モーリス・ラベル博物館や有名人のお墓のある墓地などもあるモンフォール・ラモーリ、決して有名ではないが訪れてみてはいかが?