自分に合うスタイルを見つける
水彩が好き
私は美大を出ていない。経歴に「○○美術大学卒業」と描けたら、水彩画を描く者として見栄えがいいのではないかと思うこともあるが、大体の画家さんは「経歴なんて関係ないよ」と言う。才能と実力で地位を勝ち取ってきた彼らにとっては当然の感覚なのだろうなと思う。
美大を出ても、もちろん全員が画家になれるわけではないし、就職先に困る話も聞くから、美大に行かなかったことを後悔しているわけではない。
しかしながら、美術の基本のキの字も知らないのは確かで、ちょっとだけかじってみたくなり、アメリカ滞在中にコミュニティーカレッジ(大学の教養課程)に通った時期がある。
美術を専門とする学生たちが最初に取らなければならない教養の授業で、18歳くらいの若い学生と混じって、ドローイング、デザイン、アクリルのクラスを履修。中には単位を取るためだけに来ている学生もいた。脱落者の多いデザインのクラスは課題が膨大だったがやりがいがあった。油絵に近いアクリル画もやってみた。
英語での聴講はハードルが高いが、実技中心の授業ばかりだったので、すべてのクラスを「A」(4段階の成績評価)で終えることができた。
とはいえ、それだけでは美大生の半分の知識も経験も得られなかったが、今思えば自分に一番合うスタイルを探しに行っていたのかもしれない。大学とは別にカルチャーセンターのペン画クラスにも通った。そして、最終的にはもともといたケイトの水彩画クラスに帰っていった。先生も仲間たちも約1年休んでいた私に「おかえり」と言ってくれたのが嬉しかった。 そこから私の水彩風景画への思いが本格化していったように思う。旅行に出れば、写真を撮り、家に帰ってから絵を描いたし、住んでいた街のあちこちへスケッチに出かけるようになったのもこの頃だ。ケイトの下で細々と水彩画を習い始めてから約4年が経っていた。