父から受け継がれた油絵具が娘とともにロンドンへ
タイムカプセルを開く心持ちで
2025年の夏はロンドン留学を控えた娘が熱海の自宅に戻ってきて(それまで武蔵野美術大学の近くで一人暮らしをしていた)、展覧会に向けた創作活動に励んでいました。娘はペン画やアクリル絵具などを使ったミクストメディアという分野で抽象画を描くようになっていましたが(娘は油絵科ではなくデザイン科)、ある日「油絵具って持ってない?」と聞くのです。
「あると思うよ」と言って、私はすぐに倉庫に行き、熱海に引っ越して以来、倉庫の棚で眠っていた油絵具の箱を持ってきました。
――高校生の頃、毎日使っていた油絵具。(詳しくはこちらの記事を参照)
卒業して以来、油絵具を使うことはなかったので、約30年ぶりの再会でした。いや、引っ越しするたびに持ってはきたけれど、開けることのなかった箱…いざオープン! 中が大変なことに(どんな?)なっていないか、変な物が出てきやしないかドキドキしながら、まるでタイムカプセルを開けるかのように、娘と二人で開けました。

懐かしい油絵具の香り。3年間毎日使っていたペインティングナイフ。年季の入った木製のパレット。何かの液体が入っていた古い瓶。そして使い差しの絵具のチューブ。
…変な物は出てきませんでした、良かったー。
木箱の内側に1986年と書いてある、おそらく父の字。外側には「ながたに」と平仮名で私の旧姓が書いてあり、こちらは姉の字。
すぐに母と姉に連絡すると、もともと絵を描くのが上手だった父のために買ったものの、新聞記者として多忙な父は使う暇もなく、3つ上の私の姉が高校時代の「美術の時間」に使用し、私が高校時代美術部で使ったということが判明しました。
先日この話を娘の展覧会に来たお客様に話したら「代々受け継がれるなんて素敵なお話」と言ってくださったのですが…、父はほぼ使っていないし、姉も選択授業の油絵の時間だけだし、私は3年間毎日使ったとは言え30年も放置された絵具箱だよと冷や汗ものでした(笑)。
ちなみにアクリル絵具の箱も、私がアメリカで揃えたものを娘に譲りました。プラスチックの風情のない道具箱…!代々受け継いでくださーい(笑)

数十年たっても使える油絵具
古い木箱の中で眠っていた油絵具のチューブはその後、娘の手で使える物が10本もあることが分かりました。描くときに使うオイルやメディウムなどは買いなおし、娘は数枚の絵を熱海の家で描きました。
懐かしい油絵具の木箱は今夏、留学する娘とともにロンドンへ(ロンドン藝術大学挑戦のブログはこちら)。「ファッション科」志望の娘なので、活躍の場があるか分かりませんが、とりあえず海を渡りました。ロンドンで新たに購入されるであろう油絵具たちと楽しい時間を過ごして欲しいものです。



